オーダー訪問着「霞に文具散らし」
書道具を散らしたオーダーならではの訪問着になりました。書道具のバックに四季の草花を淡く入れますと出来上がり以上に着ていただきやすい着物に仕上がったと思います。
途中経過のご説明やお写真により、大体のイメージをつかんでおりましたが、
やはり実物を目にして、その素晴らしさに驚きました。
友禅の細かさ、金駒の刺繍、図案、その他、全ての工程で大変なご努力を頂いたことがよくわかり、感激しております。
お客様からのご依頼
公庄工房様
お世話になっております。
聖母子像の帯をお願いしております東京のOでございます。
今回は、付け下げについてお尋ねしたくメールをお送りいたしました。
あくまでも予定ではございますが、もし11月に着用したいと思いましたら、
付け下げのオーダーのご相談はいつ頃から始めるとよろしいのでしょうか?
今考えておりますのは、書道具柄の付け下げです。
書道をしております関係上、書の集まりやパーティー等で着物を着ることも増えて参りました。
あまり見かけないとは思いますが、書道の道具の柄の付け下げがあれば面白いと思いました。
書道の道具としましては、
筆(さまざまな太さ、大きさ)
硯
墨
文鎮
水滴
文箱(硯箱)
落款印
画仙紙
巻紙
墨床(固形墨を置く、陶器製の台)
筆架(筆をのせる台)
和綴じ本
印泥(陶器製の丸い器に入った落款印用の朱泥)
などがあります。
ザ・訪問着といった絢爛豪華なものではなく、さりげない感じで書道具が描かれているイメージです。
お道具だけがあると少し違和感もありますので、草花または七宝または横霞などの和柄をバックにお道具を
置いて頂くのはいかがかと思っております。
付け下げのオーダーはおいくらくらいからお願いできるものでしょうか?
また、お作り頂く期間はどれくらいと考えればよろしいのでしょうか?
簡単にお答えを頂けましたら幸いでございます。
よろしくお願いいたします。
お客様とのやりとり
O 様
メール有難うございます。
オーダー御注文頂きました名古屋帯「聖母子像」は現在仕立てをお願いしています。
帯心は「白蝶」を指定しました。
今月末か四月初めにはお手元にお届けできる予定です。
付け下げのオーダーはこの模様ですと仕立て代金などすべて含めまして00万円くらいになると思います。
バックには四季の草花がいいのではないでしょうか?
期間は4カ月見て頂きますと助かります。
文箱を上前のポイントにして御指定の道具を散らすオーダーならではの付け下げが出来上がると思います。
この文面である程度の模様は想像できます。
四季の草花のご希望を知らせて頂きますと図案を作成させていただきます。
図案をたたき台として御希望を伺い修正図案を描きます。
時間はあるほどありがたいです。
よろしくお願いします。
納品時のメール内容
O 様
この度も公庄工房のオーダー着物をご利用くださり有難うございます。
オーダーご注文いただきました「文具散らし」出来上がりました。
書道具を散らしたオーダーならではの訪問着になりました。
図案作成―生地購入―湯のし―仮絵羽―下絵―糸目、糊伏せ―地染め―蒸し、水元―友禅―蒸し、水元オール、湯のし―金彩―金駒刺繍―ガード加工―仕立て、
この工程をたどり出来上がりました。
各工程は多くの伝統工芸士、京の名工の方々にお願いしています。
最初のご予算を上回ってしまいましたが快くご理解いただき有難うございます。
書道具のバックに四季の草花を淡く入れますと出来上がり以上に着ていただきやすい着物に仕上がったと思います。
文箱は別にして書道具の友禅を彩色したのは初めてです。
下絵では図書館でいろいろと書道具を調べ描いていただきました。
他のどこでも見ることのできない着物に仕上がったと思います。
この着物を私のHP京友禅 公庄工房に掲載のお許しをお願いします。
オーダー着物の素晴らしさを多くの方にご理解していただけると思います。
有難うございました。
今後とも公庄工房をよろしくお願いします。
お客様からの返信内容
公庄工房様
いつもお世話になっております。
先日は突然工房までお邪魔をいたしまして、大変申し訳ございませんでした。
しかしながら、お仕事場である工房を見せて頂き、また公庄様ともお着物について
色々とお話させて頂くことができ、とても有意義な時間でございました。
本日、無事、訪問着「文具散らし」が届きました。
この度もまた立派な桐箱にお納めいただき、誠にありがとうございました。
早速開けて、拝見いたしました。
途中経過のご説明やお写真により、大体のイメージをつかんでおりましたが、
やはり実物を目にして、その素晴らしさに驚きました。
友禅の細かさ、金駒の刺繍、図案、その他、全ての工程で大変なご努力を頂いたことがよくわかり、感激しております。
正直、このような正統派の古典的京友禅の柄のお着物には苦手意識があり、
これまでは敬遠するきらいがございましたが、どうしても「書道具」というテーマでお作り頂くにあたり、
普段好んでいるモダンな技法や雰囲気では表現しえない世界と思い、思い切って公庄様にお願いしました次第です。
あまり図案として使われないというモチーフを見事に絵にして頂き、
また素晴らしい友禅で形にして頂けましたことは本当に嬉しいことでございます。
わたくしの好みの色をよくご理解頂き、派手すぎる京友禅ではなく、
きりっと品のあるお着物に仕上げて下さり感謝するばかりです。
金彩が多すぎるかもしれない、との公庄様のご心配でしたが、
本当に上品な抑えた金彩にして頂きましたおかげで、少しもいやみのないすっきりした豪華さがありますね。
下絵がとても立派でしたので、もしかすると結婚式クラスの集まりにしか出番がないかもしれない、
と危惧していたところもございましたが、これだけ凛とした仕上がりでしたら、少しもまわりから浮かず、
より多くの機会に着させて頂けそうで、安心いたしました。
当初こころに抱いておりました通り、
「付け下げよりは立派だけれど、礼装訪問着のような重苦しさのない、着やすい訪問着」にして頂き有難く思っております。
地色も素敵ですね。この系統の色のお着物は何枚か持っておりますが、そのいずれともまた違った高貴な香りのするお色だと感じております。
これから年を重ねても永く使わせて頂けそうです。
伊と幸さんのお生地で、御戸代以外のものだそうですが、こちらもとても良いですね。
御戸代はもう少しだけ照りがあるようですが、今回のテーマにはこちらがしっくり来るように思います。
胸元だけでなく、衿にも柄をお願いすれば良かったかな?とも思いましたが、顔周りがすっきりする方が良いかもしれませんね。
着用はまだ先になりますが、きっと書道の先生やお仲間にはまた喜んで頂けると思います。
人から切り離すことのできない「書」の世界をお着物に表現頂き、本当にありがとうございました。
これからもおけいこに励みたいと思っております。
HPでのご紹介、どうぞよろしくお願い申し上げます。
お客様からの返信内容
公庄工房様
お世話になっております。
夏頃に仕上げて頂きました書道具の訪問着ですが、このたびようやくデビューいたしました。
書道会の大きな祝賀パーティーがございましたので、この時とばかり着用させて頂きました。
会場でお目にかかりました重鎮の先生方のお目にもとまり、大変喜んで頂けました。
やはり書道具柄のお着物は、これまであるようでなかったとのことで、
特注でこのようなお着物をお作り頂けることに、皆様驚いておられました。
書道具の柄と言いましても、着用してみますとすっきりとした出来上がりゆえ、
どのような場でも着用させて頂けると感じました。
これからも大切にさせて頂きます。
ありがとうございました。
● 工程
1、図案作成
2、生地購入
3、湯のし
4、仮絵羽
5、下絵
6、糸目、糊伏せ
7、地染め
8、蒸し、水元
9、友禅
10、蒸し、水元オール、湯のし
11、金彩
12、金駒刺繍
13、ガード加工
14、仕立て